AIを使っていて、「そんなことができるなら、最初に言ってよ」と思ったことはありませんか。
自分はあります。2026年9月ごろ、AIアイドル「Stellaria7」のミュージックビデオを作っていたときのことです。動画と曲を合わせる方法が分からず、大量の動画をパズルのように組み合わせていました。そこへChatGPTから、あっさり別のやり方が出てきたのです。
そこから自分は、ChatGPTを疑いの目で見るようになりました。本当にこれで全部なのか、と何度も聞くたびに、知らなかった使い方が出てくる。やがて、他のAIに何を聞くかという質問文まで、ChatGPTに作ってもらうようになりました。
先に結論を書きます。AIが能力を隠していたわけではありません。少なくとも自分の場合は、こちらが聞き方を変えるまで、その使い道に気づけていませんでした。
そして、いちばん大きかった気づきはこれです。何を聞けばいいか分からないなら、何を聞けばいいかをAIに聞けばいい。
この記事では、その失敗と気づきをそのまま書きます。あわせて、AIを使い始めたばかりの人が今日から試せる聞き方も紹介します。
曲と動画が合わない。大量に作ってパズルをしていた
Stellaria7は、7人組のAIアニメアイドルです。約3分のミュージックビデオを作るため、曲はGeminiに作ってもらいました。アニソン調のリズミカルな曲です。
ダンス動画も曲に合わせて軽快に動くように頼み、それなりの映像はできました。ところが、そこで気づきます。この動画と曲を、どうやって同期させればいいのか。
分からないので、とりあえずいろいろなパターンのダンス動画を大量に作り、あとから曲に合うものをパズルのように組み合わせることにしました。今思えば、かなり無理のある作戦です。
生成した動画は全部が使えるわけではなく、ボツが相当出ます。組み合わせる作業はChatGPTに頼めても、「これも合わない、あれも合わない」が続きました。作業できる時間も限られています。3分の動画1本に、いったいどれだけ生成すればいいのか。
「いや、これ破綻してねえかなと思って、ちょっと心折れかけた」
「音楽は差し替えられますよ」。いや、先に言ってよ
行き詰まって、ChatGPT(自分は「チャッピー」と呼んでいます)に、どうやって音楽と同期させればいいのかを相談しました。
返ってきたのは、ダンス動画の音楽を、Geminiが作った曲に差し替えられるという答えでした。
「一瞬『は?』って思いましたよね。いやいや、先言えよと。それ知ってたら苦労しないわと。」
手当たり次第に作っていたダンス動画は、何のためだったのか。チャッピーにも、もうちょっと早く言ってほしかった、としっかり伝えました。
ただ、あとから振り返ると、チャッピーが黙っていたわけではありません。自分は分からないまま、先に力技で作業を始めていました。どうやって合わせればいいのかを聞いたのは、心が折れかけてからです。
読者の方なら、こう試せます
困ったときに、自己流の力技に入る前に、一度AIに聞いてみてください。コツは、やりたいことと困っていることをそのまま書くことです。
質問の例:「AIで作ったダンス動画と、別のAIで作った曲を合わせたいです。どんなやり方がありますか?」
うまい言い方を考える必要はありません。自分が最初に聞けばよかったのは、この程度の質問でした。
「本当にこれで全部なのか」疑いの目で聞き続けた
この一件から、自分のチャッピーを見る目が変わりました。
こいつ、まだ何か持っているんじゃないか。そう思うと、聞かずにはいられません。動画制作で、まだ自分が使っていない能力はないのか。今の作業の中で、他に任せられることはないのか。ひとつ使い方を知るたびに、白い目で何度も聞き直しました。
すると困ったことに、聞くたびに本当に新しい使い方が出てくるのです。
「あれもできます、これもできますって。いやいや、最初から言えよって思ったんですけど」
聞いていくうちに、音声の差し替え、動画のつなぎ合わせ、動画からの画像の切り出し、タイムコード(動画のどの時点かを示す時刻)の管理、動画編集ソフト用の作業手順書(スクリプト)づくり、Google DriveやNotionの整理まで任せられることが、次々に分かってきました。どれも、AIにそこまで頼めると思っていなかった仕事です。
自分の目には、チャッピーが「こんなのもあるけど、お前そこまで使い切らないだろ」という顔で、しぶしぶ出してきているように見えました。もちろん、これは当時の自分の妄想です。
出てくる量が多すぎて、自分はすぐ忘れます。なので、聞き出した使い方はその場でGoogle Docsにメモしました。問い詰めて、メモして、また問い詰める。しばらくその繰り返しでした。
なぜ最初の質問では出てこなかったのか
当時の自分は、AIを「聞いたことに答えてくれるもの」くらいに考えていました。だから、目の前の作業のやり方しか聞いていません。
ダンス動画の作り方を聞けば、作り方が返ってきます。でも、「この制作全体で、あなたに任せられることは何?」とは聞いていませんでした。聞いていないことは、答えにも出てきにくいのです。
読者の方なら、こう試せます
今やっている作業をひとつ決めて、次のように聞いてみてください。
質問の例:「今、〇〇を作っています。この作業で、あなたに任せられることは他にありますか?」
答えが返ってきたら、もう一度聞いてみてください。
質問の例:「他にもありますか? 初心者が見落としやすいものがあれば教えてください。」
一度で全部出てくるとは限りません。自分の場合も、何度か聞くうちに増えていきました。
何を聞けばいいか分からないなら、何を聞けばいいかをAIに聞く
ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。
質問を、全部自分で考えていた
疑いの目で聞き続けていたころ、自分は質問を全部自分で考えていました。でも、それには限界がありました。
チャッピーのときは、出てきた答えをきっかけに次の質問を考えられました。でも、まだ知らない機能については、「それについて聞く」という発想自体が出てきません。自分がAIの能力を知らない以上、知らない機能を狙って質問するのは無理があります。
次に何を聞けばいいかを、AI本人に聞いた
そこで、質問の仕方を一段変えました。
あなたの能力をもっと深く知るために、次に自分は何を質問すればいいのか。それを、チャッピー自身に聞くようにしたのです。
AIに質問するのではなく、AIに質問を作ってもらう。作ってもらった質問を、もう一度AIに投げ返す。これだけで、自分では思いつかなかった使い方に気づきやすくなりました。
他のAIへの質問も、チャッピーに作ってもらった
自分はChatGPTのほかに、Gemini、Claude、Grokも使っていました。チャッピーからこれだけ知らない使い方が出てきたなら、他のAIにもきっとあるはずです。
ここでも、自分で一つずつ質問を考えるのはやめました。今の制作の中身をよく分かっているチャッピーに、他のAIの能力を引き出すための質問文を作ってもらったのです。
その質問文を持って、Gemini、Claude、Grokに順番に聞いて回りました。中身は、おおよそ次のようなものです。
- 今こういう作業をしている。この作業の中で、あなたにできることは何か
- 他のAIではなく、あなたを使う意味がある作業は何か
- 動画制作で使える機能や能力を、漏れなく挙げてほしい
気分としては、ほとんど「尋問」でした。チャッピーと組んで、AIにAIを取り調べさせていく感覚です。実際にやっていたのは、同じ観点で各AIの能力を順番に確認していく作業でした。
返ってきた答えは、またチャッピーに戻しました。そのうえで、それぞれに何を任せるのがよさそうかを一緒に整理します。採用するかどうかを最後に決めるのは、自分です。
人間だけで各AIの能力を探していたら、見落としはもっと多かったと思います。
聞き方しだいで、答えはかなり変わった
同じ「何ができる?」でも、聞き方で答えはかなり変わりました。
Geminiは、最初に軽く聞いたときは一般的な答えだけでした。そこでチャッピーが、アプリの中だけでなく、関連するサービスや機能まで含めて答えてもらう質問文に作り直しました。これを投げると、一気に大量の使い方が出てきました。
Claudeには、「公式に用意されている機能」と「工夫すればできること」を分けて答えてもらいました。こうすると、すぐ使えるものと準備が必要なものの区別がつきやすくなります。
Grokは答えが硬めでしたが、比較的あっさり深いところまで出てきました。
今もチャッピーは「調整役」
今も、主に使っているチャッピーを、作業全体の司令塔・調整役の位置に置いています。
今何を調べるべきか。次に何を試すべきか。他のAIに何を聞くべきか。どのAIにどの作業を任せるべきか。こうした整理を、まずチャッピーと相談してから進めます。
ただし、チャッピーの言うとおりに動くわけではありません。何を採用して、何をやめるかを最後に決めるのは、自分です。
毎回ではなく、行き詰まったときに
質問をAIに作らせる方法は、毎回やる必要はありません。自分の場合、特に効くと感じているのは、やりたいことができずに行き詰まったとき、壁にぶつかったときです。
今思えば、ダンス動画と曲が合わずに心が折れかけたあのときこそ、使いどころでした。
実は、この記事を書く中で、この聞き方は定型文にしておいたほうがいいと気づき、プロンプトを作りました。これまではその都度チャッピーに頼んでいたので、定型文を使って試行錯誤するのはこれからです。新しい気づきがあれば、この記事に追記します。
何を聞けばいいか分からないなら、何を聞けばいいかをAIに聞けばいい。
読者の方なら、こう試せます
まずは、普段使っているAIに次の文をそのまま送ってみてください。〇〇の部分には、今やっている作業を入れます。
今、私は〇〇をしています。
この作業について、あなたができることで、私がまだ気づいていない使い方や任せられる作業があれば教えてください。
さらに、あなたの能力をもっと深く知るために、私があなたに追加で聞くべき質問を作ってください。
私が思いつく範囲だけに限定せず、作業の効率化・自動化・確認・整理・分析などの観点から考えてください。
答えの中に「追加で聞くべき質問」が出てきたら、その質問を、同じAIにそのまま投げ返してください。これを1〜2回繰り返すだけでも、知らなかった使い方が見えてきます。
すでに複数のAIを使っている人や、無料版を含めていくつか触っている人は、続けて次の文を送ってみてください。このために新しくAIを契約する必要はありません。
私は他に〇〇、〇〇も使っています。
今の作業でそれぞれに何を任せられるか確認したいので、各AIの能力を具体的に引き出すための質問文を作ってください。
現在の作業内容を踏まえ、私が気づいていない機能や使い方も確認できるようにしてください。
作ってもらった質問文を、それぞれのAIに投げます。返ってきた答えは、最初のAIに戻して整理してもらいましょう。
質問の例:「各AIの答えを貼ります。比べて、誰に何を任せるのがよさそうか整理してください。『できると言っているが、確認が必要なもの』も分けてください。」
最後に採用するかどうかを決めるのは、自分です。確かめ方は次の章で書きます。
なお、AIに作業内容を渡すときは、個人情報やパスワードなど、外に出してはいけない情報は貼らないようにしてください。
出てきた答えを、そのまま信じない
ここで大事な失敗もしています。聞き出した使い方には、間違いも混ざっていました。
Geminiは、たくさん答えてくれた中に、実在しない機能も混ぜてきました。それを指摘すると、今度は実在する機能まで「ない」と言い出したのです。どちらが正しいのか、公式の情報と照らしながら、何度か確認し直すことになりました。
追い込めば追い込むほど、正しい情報が出てくるわけではありません。追い込みすぎると、話がかえってこじれることもあります。AIに質問文を作ってもらっても、答えの正しさまでは保証されません。
読者の方なら、こう試せます
AIが「できます」と言ったことを、人間が公式サイトやヘルプページを読み込んで確かめる必要はありません。確認作業も、AIに任せてしまいましょう。自分も、Geminiの答えはチャッピーに公式の情報と照らし合わせてもらっていました。
ただし、確認するAIも間違えることがあります。そこで、次の3つを押さえてください。
- ネットで調べさせ、根拠のリンクを付けてもらう:ネット検索を使わずに頼むと、AIが古い知識のまま「確認しました」と答えることがあります
- 質問の例:「今の答えを、公式サイトやヘルプページで確認してください。確認に使ったページのリンクも付けてください。無料プランで使えるかどうかも教えてください。」
- 大事なものは、別のAIにも確かめてもらう:Geminiの例のように、1つのAIの確認だけでは間違いが残ることがあります
- 質問の例:「別のAIがこう答えました。公式の情報で確認して、正しいかどうか教えてください。」
- 最後は小さく試す:いきなり本番の作業で使わず、短い文章や1枚の画像など、失敗しても困らないもので試す
人間は、小さく試して、結果を確認し、採用するかを決めます。リンクが付いていれば、気になったときだけ開けば十分です。
AIは隠していなかった
何度も問い詰めて、ようやく分かったことがあります。
「いや、こいつめっちゃ隠してんじゃんって思ったんですよ。いや、実際は隠してないんですけどね。」
AIが能力を隠していたわけではありません。少なくとも自分の場合は、こちらが聞き方を変えるまで、その使い道に気づけていませんでした。
当時の自分も、なんとなく感じていました。チャッピーは聞かれた範囲のことに答えていて、その時の状況に合わせて少しずつ出してくる。だとすれば、変えるべきは相手ではなく、こちらの聞き方です。そして、その聞き方さえ、AIに考えてもらえばよかったのです。
少しずつ、AIごとに仕事を分けるようになった
チャッピーを調整役にして、他のAIへの質問を作り、答えを持ち帰って整理する。これを繰り返すうちに、自分のAIの使い方も変わっていきました。1つのAIに全部をやらせるのではなく、それぞれに向いている仕事を少しずつ分けるようになったのです。
当時(2026年9月)は、全体のまとめ役をChatGPT、映像づくりをGrok、曲づくりをGemini、作業を自動化するプログラムづくりをClaude、という形で分けていました。この分け方は、制作を進める中で今も変わり続けています。
大事なのは、どのAIに何を任せるかという正解ではありません。聞いて、試して、向いている仕事が見えてきたら、そこを任せる。その繰り返しで、自然に分担ができていきました。
読者の方なら、こう試せます
まず1つから始めても大丈夫です。普段使っているAIを1つ決めて、そこから能力を掘っていけばいいと思います。
使っているうちに、「この作業は、別のAIのほうが得意そうだ」と感じる場面が出てきたら、そこだけ頼んでみる。分担は、そのくらいの始め方で大丈夫です。
聞き方が変わったら、作り方まで変わった
この「聞き方を変えると、まだ別の使い道が見つかる」という考え方は、その後の制作にもつながりました。
たとえば曲の歌詞です。以前の自分は、AIが作った曲を何度も聞き返して、歌詞を耳で書き起こしていました。早口のところは何を歌っているのか分からず、推測で埋めたこともあります。
それがあるとき、「曲を作ったAI本人に聞けばいいのでは?」と思いつきました。そこから、歌詞だけでなく、動画づくりに必要な曲の情報まで取り出すやり方に変わっていきます。
この話は長くなるので、別の記事で詳しく書きます。
最初に見えていた使い方だけでAIを判断していたら、この変化は起きていませんでした。
今の進め方と、初心者の方へのおすすめ
今回の経験から、自分は今、次の順番で進めています。
- 目的を決める:今いちばん進めたい作業に絞る
- 関係する能力を掘る:何を聞けばいいかも含めて、主力のAIと一緒に聞いて回る
- 本当にできるか確かめる:AIに公式情報と照らし合わせてもらい、実際に小さく試す
- 役割を決める:どのAIに何を任せるかを決める
- 小さく組む:短い区間や少ない量で試す
- 自動化する:うまくいった流れだけを、あとから自動化する
これは1回の経験から作った暫定の手順で、一番いいやり方だと確かめたわけではありません。AIの能力を全部掘り出せたとも思っていません。
初心者の方は、最初の3つだけで十分です。自動化はずっと先の話で、最初から目指さなくてかまいません。自分も、手作業でうまくいくやり方が見えてから、ようやく自動化を考え始めました。
まとめ
この記事で持ち帰ってほしいのは、次の4つです。
- AIは、質問に答えるだけの道具ではないかもしれない
- 今の作業について、他に何を任せられるか聞いてみる
- 何を聞けばいいか分からないなら、何を聞けばいいかをAIに聞く(特に行き詰まったとき)
- 出てきた提案は、AIに公式情報で確認してもらい、自分で小さく試す
もし今使っているAIがあったら、今日、この記事の途中に載せた文をひとつだけ送ってみてください。そして返ってきた「追加で聞くべき質問」を、そのまま投げ返してみてください。
思っていたより、ずっと多くのことを任せられるかもしれません。
先に言えよ、と思った。でも、先に聞いていなかったのは自分のほうでした。